ヨセミテ 2004 (ビッグウォール編)

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現地時間で9/3の11時頃にサンフランシスコに到着。レンタカーオフィスに向かうところ。
レンタカーにのりこんだら早速ヨセミテに向って出発。行き方は比較的簡単で、順調に行けば4時間と少しくらい。我々は、Yahoo!のDriving Directionsであらかじめ行き方を調べておいたが、これがちょっとアホというか、妙な行き方をしてくれた。フツーにハイウェイだけで行ったほうが早かった気がする。途中でレストランによったりスーパーで水などを買ったり渋滞に遭遇したりで7時間とちょっとかかってしまった。国立公園のゲートを通過して少しいったところにあるCrane Flatキャンプ場を予約しておいたので、この日はここでキャンプ。着いた頃には暗くなりかけていたので、さっさとテントをはり、テキトーなものを食べて就寝。ここはものすごく寒く、これからさきのことが少し不安になった。

9/4の朝、起きたらすぐにテントをたたみ、Valleyへ向かう。30分ほど車を走らせるとValleyに入り、早速El Capitanが見えてくる。あまりに大きく美しい岩に圧倒される。ホントにこの岩を登れるのだろうかとまたまた不安が頭をもたげてくる。

とりあえずCamp 4に行き、テントサイトを確保。受付の窓には「Camp Full」という札がかかってはいるものの、とりあえず入れてくれるようで安心。通常なら1サイトに6人だけど、混んでいる時はもっと入れてくれるみたい。Valley内にはいくつかキャンプ場があるが、クライマーにとってはなんといってもCamp 4。これは唯一予約のいらない(とはいっても受付は必要)ウォークインタイプのキャンプ場で、たいてのクライマーはここに泊まるらしい。最長で7泊分を受付てくれるので、長くいる人は7日ごとに受付をしなおさなければいけない。8:30にレンジャーがやってきて受付が開始されるが、そのあたりに並んでいればたいてい取れるのではないかと思う。Valley内にはいくつかショップがあり(Yosemite VillageにあるVillage Shopが大きく品揃えも豊富)食料はそこで調達できる。ヨセミテ価格なので多少高いがまぁしょうがない。ガスのカートリッジもVillage ShopもしくはCurry Villageにあるマウンテンショップで買えるが、とても高いのでヨセミテに着く前にどこかで買っておいたほうがよい。

当初の予定では、「The Nose」の視察をした後ショートルートで体を慣らすというものだったが、まずとにかく取付いてみようということになった。あわよくば第4ピッチの終了点まで行きロープをフィックスしてこようという目論見であったが、取付いたのも少し遅かったし、思っていたよりも進まなかったため、第2ピッチの終了点まででこの日は終了(2ピッチとも先生がリード。自分は第1ピッチをフォローで登った。第2ピッチは自分も高森君もユマーリングで上がった)。雲一つなく太陽はギラギラと輝いておりとても暑い。さいわい湿度が20%もないというコンディションなので不快さはないが、とにかく暑いのと、ルートが長く厳しいのが少し不安。
Camp 4に戻り晩御飯を食べて寝るが、「The Nose」を登れる気がしない。予定では4日間で登るつもりだが、あのスピードでは4日では足りないような気がする。また、これだけ暑いと水を大量にもっていかないといけないだろうがこれも不安。さらに足の調子があまり良くない。どうもツマ先が痛んできて、これは以前に爪がはがれた時と同じような感覚だ。不安だらけの夜をすごす。

9/5朝。どうやら先生も同じようなことを考えていたようで、3つのオプションが提示された。

  1. 「The Nose」をとにかくがんばって登る。
  2. とりあえず「The Nose」の4ピッチ目まで行く。
  3. ターゲットをWashington Columnの「South Face」に変更する。

あまりにもできそうにもないことをがんばるのは無駄な努力でしかないと思うので自分は3を選択。高森君も3を選択して、3に決り。トポを見ると「South Face」は全10ピッチで1泊のビバークで抜けるルートのようだ。「most easiest big wall route」と書いてあったりするのでさすがにここは登れるだろう。左の写真の手前の岩がWashington Column。ちょうど真中あたりにあるレッジがDinner Ledgeでビバークするところ。El Capitanに比べればだいぶ小さな岩に見えるが、これだってけっこうデカい。昨日フィックスしたロープを回収し、「South Face」の取付きまで行ってみる。Ahwahnee Hotelの駐車場に車を止め、歩いて1時間と少しで取付きに着いた。明日の早朝に取付くことにし、持っていったクライミングギアやロープをデポしてCamp 4に戻る。足先の痛みが増しているのが不安……

9/6朝5時すぎに起床。昨晩眠ろうとしたら爪先に激痛が走り、その後ずっと痛んだためほとんど寝られなかった。起きる前の三四十分だけ少しまどろんだぐらい。このままでは足を引っぱるだけなので先生に相談。クライミングシューズをはかなければなんとかなりそうだったので、3rdに徹して登る時は引き上げる荷物をケアしながらユマーリングすることにして、とりあえずついて行くことにした。食欲もあまりないがなんとか詰め込んで出発。
左の写真は第1ピッチをリードする先生。我々の前に若い日本人二人のパーティがいた。

第3ピッチの終了点がDinner Ledge。ここまではわりと順調。自分の足も、痛みはあるがなんとかなっている。今夜はここで泊まるため、自分は残ることにして、先生と高森君が行けるところまで行くことになった。

第4ピッチのハング越え。これがなかなか手強いようでだいぶ手こずり、先生も抜けるのにかなり時間がかかった。2ndとしてユマーリングした高森君も、ハングのところのギアの回収でかなり手こずった。先行パーティが第5ピッチをユマーリングしているのが見える。結局、このピッチの終了点に二人がついたのが17時か18時くらいで、この日はこれで終了。Dinner Ledgeはとても広く快適なビバークができた。夜は星がものすごく綺麗で、人工衛星もたくさん見えた。初日にとても寒くて不安だったが、Valley内にいる間は夜もそれほど寒くなくて良かった。

Dinner Ledgeからはハーフドームが綺麗に見える。

9/7朝6時頃起床。朝食を取り準備をして出発。第4ピッチの終了点までユマーリングで上がり、やはり先生がリードで第5ピッチを登る。ところが、このピッチで大苦戦。8時40分にクライミングを開始したのだが、先生が終了点に着いたのが13時前。1ピッチを登るのに実に4時間近くも費やしたことになる。さらに残りの二人がユマーリングで第5ピッチの終了点に着いたのが14時前。この時点で計画を見直さざるを得なくなった。オプションは2つ。もう1ピッチ延ばしてDinner Ledgeに戻りもう1ビバークして登り切るか、ここであきらめるか。残りの水の量を考えると一つめのオプションは無理そう。どうせ自分は3rdでついて行くだけなので、水の消費を押さえるためにも完登を目指すなら自分はDinner Ledgeで待っているのがいいと思うが、それを考えても水が足りない。ということで、残念ながら中止を決定。左の写真は第5ピッチの終了点からまっすぐ上に向かって延びる第6ピッチのフィンガークラック。紺碧の空が恨めしい。

降りざるを得なかった理由は単純で、第一は水不足。行動中は一日に一人あたり1.5リットルで朝晩の食事などで1.5リットル、つまり3リットル/person/day 分の水を持っていったわけだが、あまりにも天候が良すぎたため足りなかった。日中はおそらく34℃くらいになっていただろう。しかも湿度は20%もなく上のほうへ行くに従って風が強くなるため、体から出て行く水の量はかなり多かったはず。また、登るスピードがあまり速くない上に暑さでさらに遅くなり、リードで行けるのが先生だけだったというパーティとしての実力不足もあったのだろう。もっともっとトレーニングを積み、パーティとしてのレベルを上げてから挑戦しないとビッグウォールを登るのは到底かなわないのではないかと思う。

疲れ切って駐車場にたどりついたら、なんと車がない!? 置いたはずの場所にはないし、疲れた体を引きずりながら駐車場内全体を見てまわってもやはりない。取られたのか? 全員のパスポートや財布も置いてあるというのに!! とりあえずホテルのフロントに行って話をしてみると、昨晩熊が車を叩きこわす事件があったような気がするなどと不気味なことも言われつつ、Valleyのオフィシャルに問合せてみるようアドバイスされる。早速電話して聞いてみたら、それらしき車を保管しているとのこと。車がどういう状態なのかはまだ見てないのでわからない。とりあえずガレージに来いというので、また重い荷物を持って移動。さいわいガレージは歩いて20分くらいのところにあり、そこで早速聞いてみると、どうやら我々の車が保管されているようだった。しかも壊されてもいない。どうも、食料の入った紙袋が外から見えるような状態で車を置いていたためレッカー移動されたようだ。罰金なんと$90だが、車も全員の貴重品も無事だったのだからしょうがない。Valley内にはあらゆるところに食料を車の中に置きっぱなしにしたりテントの中に置かないようにとの注意書きがあるのだが、どうもピンとこなく、いい加減にやってしまっていたのがいけなかった。キャンプ内には左の写真のように、食料を入れておく頑丈な箱があり、全ての食料はこの中に入れておかないといけない。今回我々が熊を見ることはなかったが、今年に入ってもう200件くらい熊が登場しているようで、軽く考えるのは本当にいけないようだ。